イントレプレナー塾
TAM・SAM・SOMとは?新規事業の市場規模を3ステップで算出する方法

「TAM・SAM・SOMって、何が違うんですか?」
新規事業の市場規模算出において、このような悩みを抱えている方は少なくありません。調査レポートの数字をそのまま事業計画書に貼り付けたところ、経営陣から「ファンタジーだ」と指摘されてしまった——そんな経験はないでしょうか。
TAM・SAM・SOMは「夢の大きさ」を示す指標ではありません。事業計画の解像度を上げるための道具です。本記事では、既存企業の事業開発担当者が社内稟議・経営会議で使える実務視点から、TAM・SAM・SOMの定義・算出方法・活用法を解説します。
目次
TAM・SAM・SOMとは何か——新規事業 市場規模の基本指標
新規事業の計画書でよく目にする「TAM・SAM・SOM」は、市場規模を三つの層で整理するフレームワークです。
TAM(Total Addressable Market)とは、ある製品・サービスが対象とできる市場全体の規模です。「もし自社のサービスを日本中のすべての人が使ったら」という最大値を示します。
SAM(Serviceable Available Market)は、TAMのなかで自社のビジネスモデルや地理的条件・販売チャネルを考慮したうえで、実際に届けられる範囲を絞り込んだ市場規模です。
SOM(Serviceable Obtainable Market)は、SAMのなかでさらに現実的に獲得できる市場シェアを指します。「最初の3年でどこまで取れるか」という事業計画の根拠となる数字です。
この三層構造を使うことで、市場の大きさと自社の勝ち筋を同時に整理できます。スタートアップだけでなく、既存企業の新規事業開発においても、経営会議の説明資料として活用できる重要な指標です。
参考:東京大学IPC「TAM・SAM・SOMとは?市場規模の考え方と計算方法」(https://www.utokyo-ipc.co.jp/column/tam-market-size/)
なぜ今、新規事業における市場規模の算出が必要なのか
経済産業省が公表している各種レポートにおいても、新規事業創出やスタートアップの育成は、日本経済の成長に向けた重要なテーマとして位置づけられています。
また、民間調査においては、人口減少や市場の成熟化を背景に、既存事業の成長に停滞感を抱く企業が、新たな事業の柱を模索している実態が明らかになっています。
こうした中で新規事業への取り組みは広がっている一方、実際に事業として成立させることは容易ではなく、その背景には「どの市場を狙うべきか」「どれくらいの規模が見込めるのか」といった、市場の捉え方や初期設計に関する課題が存在しています。
インターウォーズは、創業30年・1,500人を超える企業内起業家(イントレプレナー)を支援し、200社超のプロジェクトに関わってきました。イントレプレナー塾(32期)の現場でも、受講者が市場規模の設定でつまずくケースは後を絶ちません。
新規事業の成功率は10〜20%程度といわれています。失敗要因のひとつが市場規模の見誤りです。「大きな市場がある」という根拠だけで進めてしまい、自社が実際に取れるシェアを見積もれていないケースが非常に多く見られます。
TAM・SAM・SOMを正しく使えば、「なぜこの市場に参入するのか」「どこから始めるのか」を経営陣に筋道立てて伝えられるようになります。
参照元:経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/archive_report.html)
参照元:PwC「新規事業開発の取組みに関する実態調査2025年」(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/new-business-development-survey-2025.html)
TAM・SAM・SOMの算出方法と3つのステップ

市場規模の算出には、大きく「トップダウン」と「ボトムアップ」の2つのアプローチがあります。TAMはトップダウン、SOMはボトムアップで算出するのが実務上の定石です。
ステップ1 TAMをトップダウンで把握する
まずTAMは、業界レポートや統計データをもとにトップダウンで算出します。「国内の〇〇市場は◻◻億円規模」という形です。
ただし、この数字をそのまま事業計画書に書いても経営陣には響きません。調査会社のデータは「潜在的な市場全体」を示しているにすぎず、自社が狙える市場を示しているわけではないからです。TAMはあくまで「この領域はこれだけ大きい」という文脈整理のための数字です。
ステップ2 SAMで自社の到達範囲を絞り込む
次にSAMを定めます。TAMのなかで、自社のビジネスモデル・販売チャネル・対象顧客・地理的条件を考慮したうえで、実際に届けられる範囲に絞り込みます。
たとえば「国内の中堅製造業(売上70億〜数百億円規模)を対象にした新規事業支援市場」のように、セグメントを明示することが大切です。セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング(STP)の視点を使うと整理しやすくなります。
ステップ3 SOMをボトムアップ分析で算出する
最も重要なのがSOMです。ここはボトムアップ分析で積み上げることが、経営陣の納得を得る近道です。
「月に訪問できる企業数 × 成約率 × 客単価 × 12ヵ月」という積み上げで算出します。市場調査の数字ではなく、自社のリソースと行動計画から逆算するのがポイントです。「なぜこの数字が取れるのか」を問われたときに、具体的な根拠で答えられる計画を作ることが大切です。
顧客起点で市場規模を定める——「鳥の目・魚の目・虫の目」の活用
市場規模の算出でよくある失敗は、数字の計算だけに集中してしまい、顧客の実像を見失うことです。
インターウォーズでは、事業機会を見極める際に「鳥の目・魚の目・虫の目」という三つの視点を大切にしています。🦅 鳥の目(俯瞰)で業界全体のTAMを捉え、🐟 魚の目(潮流)で時代の流れからSAMの方向性を読み、🐛 虫の目(現場)で顧客の生の声からSOMの根拠を積み上げる。この三層の視点を組み合わせることで、市場規模算出の解像度が大きく変わります。
SOMを算出するときは、特に「虫の目」が重要です。顧客インタビューを通じて「実は〜」という生の声を拾い、「この課題を抱えた人が何人いるか」を積み上げていく。これが顧客起点のボトムアップ分析です。
「仮説 → インタビュー → 修正 → 再具体化」のサイクルを回すことで、SOMの数字が机上の計算から、実感をともなった計画へと変わっていきます。

企業内起業家が陥りがちな市場規模設定の3つの落とし穴
経営陣から「ファンタジー」と言われる計画書には、共通したパターンがあります。インターウォーズが現場で見てきた失敗例をもとに、代表的な3つを整理します。
落とし穴① TAMをそのまま使う
「〇〇市場は1兆円規模」と書いても、自社との接点が見えなければ経営陣は納得しません。TAMは「世界はこれだけ大きい」という文脈整理の道具であり、事業計画の根拠にはなりません。
落とし穴② SOMを直感で書く
「まず1%を取る」という計画書をよく見かけます。しかし、なぜ1%が取れるのかの根拠がなければ、数字は意味を持ちません。ボトムアップで積み上げた数字でなければ、経営会議では通りません。
落とし穴③ 市場定義が広すぎる
「日本全国の中小企業向け」という設定では、SOMが絞れません。「誰の、どんな課題を」解決するのかを5W2Hで具体化し、まず最初の顧客像をはっきりさせることが大切です。
経営陣が納得する事業計画書でのTAM・SAM・SOMの活用法
インターウォーズが伴走支援してきた事業開発の現場では、TAM・SAM・SOMを使った市場規模算出が、経営陣とのコミュニケーションの質を大きく変えることを何度も目の当たりにしてきました。
経営陣が見たいのは「市場の大きさ」だけではありません。「なぜこの市場で、なぜ今、なぜ自社がやるのか」という筋道です。TAMで時代の文脈を共有し、SAMで自社の土俵を示し、SOMでボトムアップの根拠を積み上げる。この三層の説明ができると、経営会議での議論が一段と前向きになります。
既存事業の市場と新規事業の市場を比べる
ここでもう一つ、経営陣の判断精度を高める視点があります。それが「既存事業の市場規模と、新規事業の市場規模を並べて比較する」というアプローチです。
既存事業のSOM実績を基準に置くと、新規事業のSOM見通しの現実性を検証するものさしになります。「既存事業では年間●社を獲得できている。新規事業でも同じリソースを投じた場合、どこまで届くか」という問いが、計画の説得力を高めます。
また、既存事業が成熟・縮小傾向にある場合、新規事業のTAMの成長余地との比較が、経営資源をいつ・どれだけ移行するかの根拠になります。「現在の事業は〇〇億円市場で成熟期。新規事業が狙う△△市場は年率〇%で拡大中」という対比があると、移行の緊急性と方向性を同時に伝えられます。
さらに、既存事業で培った顧客基盤・ノウハウ・販売チャネルを新規事業のSAM絞り込みにどこまで転用できるかを示すことが、社内資源を活かした参入優位性の根拠になります。既存企業だからこそ持てる「勝ち筋」を、TAM・SAM・SOMの数字で可視化していきましょう。
インターウォーズではSOMの根拠となる顧客ヒアリングを体系的に進める伴走支援を行っています。5W2Hで課題を具体化し、インタビューで「実は……」という生の声を聴き、仮説を修正しながら市場定義を固めていく。このプロセスこそが、単発の研修ではなく、事業化を見据えた実践型プログラムの要です。
安全に試せる場・伴走者・挑戦機会の三位一体を整えることで、企業内起業家(イントレプレナー)は市場規模算出という難所を乗り越え、経営陣が納得する事業計画を描けるようになります。
まとめ——TAM・SAM・SOMは「計画の解像度」を示す道具
本記事でお伝えしたことを整理します。TAM・SAM・SOMは「夢の大きさを示す指標」ではなく、「事業計画の解像度を上げるための道具」です。
既存企業の新規事業開発においては、SOMをボトムアップ分析で算出し、顧客起点の根拠を積み上げることが、経営陣の納得を得る近道になります。鳥の目・魚の目・虫の目の三つの視点を組み合わせ、「仮説 → インタビュー → 修正 → 再具体化」のサイクルを回すことで、市場規模の数字は単なる計算式から、実感のある事業計画へと変わります。
市場規模算出に悩んでいる方、経営陣への説明に自信が持てない方は、ぜひ伴走支援についてご相談ください。まずは状況を伺い、どこから整えると前に進みやすいかをご一緒に整理します。
新規事業の市場規模設定や事業計画づくりでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。インターウォーズでは、構想段階から事業化まで一貫した伴走支援を行っています。
