7月27日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます。
日本は世界一の企業長寿国だ。長寿企業の一社である永谷園は、企業理念を守りながらも変化を続け、永く食卓で愛され続けている。100年企業の経営の本質は、創業者のDNAや理念を受け継ぎ、オーナーシップを持つ経営者の「不易流行」での決断思考にある。
「100年企業の経営マインド」
「3万3076社」。
この数字は創業100年を超える日本企業の数だ。
世界の創業100年以上の企業の41.3%を占めており、日本企業は世界一の長寿国だ。
また、永谷園は大相撲に懸賞金を出していることでも知られている。新型コロナウイルス拡大の影響で、2020年4の大相撲7月場所は無観客開催となり、多くの企業が懸賞を取りやめるなか、永谷園は変わらず懸賞金を出した。
日本の伝統文化である相撲と永谷園の関わりは古く、変わらぬ姿勢に大相撲ファンからは称賛の声が上がった。
永谷さんは「創業以来、科学技術の進歩や価値観の多様化、食の安全地球環境に対する意識など、永谷園を取り巻く状況も大きく変化したが、『味ひとすじ』の精神は何ひとつ変わっていない」という。
永谷さんは、何を守って残し、何を挑戦し変えていくか、「不易流行」のバランスを持った決断思考で「世界になくてはならない会社」を目指している。
100年企業には創業者のDNAや理念を受け継ぐオーナーシップを持つ経営者が多い。「会社を持続させる」ミッションに対して、「与えられた」ものではなく、会社を「所有」しているマインドで意思決定をする。オーナーシップを持つ経営者は、誰よりも危機感を持ち、「不確実な明日に向かって、今なにをなすべきか」を考え、自らの全存在を賭けた戦略的な決断思考を武器にしている。短期的アプローチではなく、長期的視点からの自らの主体的な意志で、イノベーションに挑むことに100年続く経営の本質がある。
日本は今、円安、物価高騰、新型コロナウイルス、ウクライナ侵攻と予期せぬできごとが勃発し、企業はかつてない危機にひんしている。激変する経営環境のなかで、「不易流行」での決断思考の連続が100年企業の新たな歴史を刻んでいる。